ユノがアメリカに到着して、関係者に挨拶している様子がネットで流れた。 メールで無事に着いた事は確認しているが、映像で様子を見て、 「良かった、ヒョン元気そうだ」 そして、薬指に光る指輪を見て、チャンミンは頬が緩んだ。 しかし、その後何気に見ていたネットにチャンミンは体が強張った。 ”ユチョン渡米” 「え?」思わずその文字に反応して、その記事をクリックした 記事から飛んだ写真に写るユチョン… チャンミンのマウスを動かす指が止まり、固まった。 「ヒョンが持って行ったリュックと同じ物…  なんで? なんで??」 チャンミンは思わず携帯を探し、ユノのアドレスを開いた。 文字を打とうとした指が震えた。 「なんて、打つんだよ… ユチョンヒョンと逢うの? お揃いのカバンでアメリカ行ったの?」 …頑張ってるヒョンにそんな事聞けるわけない… ……信じよう  …ユノヒョンを信じよう… 偶然だ!偶然に決まってる。 ユノヒョンの言葉を信じよう… そう思い、パソコンを閉じた。 そして、携帯に文字を打った。 チャンミンがようやく眠りにおちた夜明け前、携帯が鳴った。 「あ、ヒョン」 「チャンミナ?そっち何時?電話して、ってどうした? 寝てた?悪い悪い… チャンミナ、大興奮だよ!やっぱこっちは違うよ! ダンスの先生もメンバーも全然違うよ!」 ユノは興奮気味にまくしたてた。 「うん、ヒョン良かったね。うん、頑張って あのさ、指輪つけてくれたんだね。ネットであがってたよ。 当分僕はつけられないな」 「そうだなぁ〜またすぐに見つかって、何やかんや言われるかもな。 でも、何言われてもいいから、すればいいよ! 起こして悪かったな。寝てるとは思ったんだけど、 どうしてもおまえの声が聞きたくて。 じゃぁまた連絡するから」 一方的にそう言い、電話は切れた。 チャンミンはフフッと苦笑いしながらも、嬉しかった。 ヒョンがかけてきてくれて、声が聞きたかったって… チャンミンの胸がキュンとした。 信じよう。 そんな日々が続き、あっという間に ユノのアメリカ滞在期間も終わりに近づいた頃 ネチズンの間でユノとユチョンのリュックが同じで同時期渡米 向こうで密会か!?と噂が広まっていた。 「僕が気づくんだから、そりゃファンも気づくよな…」 チャンミンはせっかく封じ込めていた気持ちの扉を またこじ開けられたように、不安で一杯になった。 そして、追い打ちをかけるように チャンミンとユノの関係を当然ながら何も知らないスタッフが 「チャンミンさん、ユノさんは向こうでユチョンさんに逢うって言ってました? 事務所には内緒ですよね?」 と小声で聞いてきた。 「知らないよ!そんな事聞いてないし!逢う理由なんか何もないじゃないか!!」 そう怒鳴るチャンミンに驚いた様子で 「そ、そうですよね。すみません。ファンの噂ですよね。変な事言ってすみません」 慌てて、謝った。 「そうだよ!… 逢う理由なんて…  もう何1つない!」 チャンミンは飛び出してしまった不安な気持ちを押し戻すように 必死で自分に言い聞かせた。 そして、ユノが帰ってくる日 チャンミンは久しぶりにユノに逢える嬉しさと どうしても思い出してしまう不安な気持ちを抱えながら 時を過ごした。 「ただいま〜チャンミナ〜」 沢山の荷物を抱えて、ユノが帰ってきた。 「おかえり、ヒョン」荷物を受け取り、部屋に入ろうとする チャンミンの腕をつかみ、引き寄せキスをした。 ひとしきり唇を激しく交わし、ようやく満足したように 離れたユノは改めて、チャンミンをきつく抱きしめ、 耳元で「逢いたかった」と囁いた。 フーっと溶けていくチャンミンの心 「あーヒョン…」ユノの肩に顔を埋めた。 しばらく抱き合った後、ユノは片手でチャンミンの肩を抱き、 部屋に向かいながら 「なぁーチャンミン聞いてくれよ!…」 楽しそうに話し出した。 ソファに引っ付いて座り、ユノはチャンミンの手を撫でながら アメリカのみやげ話をした。 ユノに撫でられるチャンミンの手が、初めはくすぐったいだけだったが 執拗に撫でられるうちに次第に違う感覚に変わっていった。 その感覚が恥ずかしく、チャンミンは手を引っ込めようとしたが ユノに止められ、またしつこく撫でられた。 段々とユノの声が遠のいていく。 「……  ッンハ…」たまらずチャンミンはユノの肩に頭をのせた。 「…  ん?チャンミナ…もう待ちきれなくなった?」 「ち!!違うよ!!」チャンミンは真っ赤になってパッとユノから離れた。 「なんだ、違うのかよ。やっとチャンミナから来てくれたのかと思って 喜んだのに」 そう言って、ユノはチャンミンを引き寄せ耳を舐めだした。 「……  ァ ……」 「シャワー一緒に行く?」卑猥な音を立てて舐めながら、ユノは聞いた。 「嫌だ!」冷たく言い放つチャンミンにユノは 「なんでだよ!」拗ねたように聞く。 「すぐに立ってられなくするくせに、我慢して立ってろ!って…… あれ……  辛いんだからな!」 チャンミンはユノから目を逸らせて、怒ったように訴えた。 ユノは目を細めて、愛おしそうにチャンミンの顎を持ち 自分の方に向かせて、おでこをコツンとあわせ 「あの時のチャンミナが最高に可愛いのに」 そう言って、キスをした。 「じゃぁ仕方ない、一人で浴びてくるか…。 チャンミナ シャワー浴びた?」 「うん」少し照れたように頷いたチャンミンに 「やっぱり準備万端じゃん!!」そう笑ってユノは浴室へと消えた。 Beat it Beatit〜♪ 大きな声で歌うユノの楽しげな様子と ソファーに広げたユノからのお土産にチャンミンは頬が緩んだ。 ペアのペンダントにペアのTシャツ、ペアのズボンにペアのリュック 「よくもまぁこんなに全部ペアで買えたもんだな。 ヒョンどんな顔して選んでたんだろ?」 「フーーー!」マイケルのように叫び、タオルを腰に巻いただけの姿で 髪をゴシゴシ乾かしながら、ユノは部屋に戻ってきた。 「チャンミナ、何ニヤケてんの?」 「ヒョンがどんな顔して、これ買ったのかと想像してたんだよ」 「いやー楽しかったよ!こっちだと周りの目気にしてペアなんか 中々買えないけど、むこうだとみんなに見つからないから 気兼ねなく買い物出来たよ。 どうせ一緒には着れないけどな」 「さ!お待たせ」そう言って、チャンミンの手を引っ張って ズンズンと寝室へ進んだ。 「あのさ、あのさ …ヒョン…むこうで誰かと逢った?」 「誰かって?」不思議そうにそう聞きながら チャンミンをベッドに押し倒す。 「先生とかじゃなくてさ…」押し倒されたまま のしかかってくるユノの顔を見つめて言った。 チャンミンの顔の両側に手をつき 「あーそういえば、BOAに逢って、みんなで飯食った…」 「BOA先輩?」 「なんかレコーディングで来てたみたいで、スタッフが教えてくれて 一緒に飯食ったんだ…なんだ、チャンミナ誰かに聞いた? それで、またやきもちか!?BOAだぜ???」 納得のいかない表情でユノは上からチャンミンを見下ろした。 「え…いや… BOA先輩は知らなかった…」 「何だよ… 他には別に誰とも会わなかったけど!?」 少しイラッとした様子でユノは答えた。 チャンミンは「ごめん、ちょっと聞いただけ」と言い ユノの首に両腕を巻き付け、引きよせた。 「変な奴!」そう言いながら、ユノの優しい唇がチャンミンの首すじをさまよった。 チャンミンは少しホッとした。 「チャンミナ…明日の予定は?」 「ボイストレーニング…」 「ふ、じゃぁ大丈夫だな」 そうして、二人の久しぶりの愛の炎はいつまでも激しく燃え続けた。 「…  …  ハァハァ …  ァ…  ヒョン …」 止まる事なくつづくユノの激しい愛撫にチャンミンは息も絶え絶えだった。 「…  もうダメだよ …  ヒョン… もう… や … ァン …」 綺麗な首すじを仰け反られて、そう漏らすチャンミンに 「またそんな可愛い声で俺をそそるんだな…」そう言って 綺麗な首すじにキスを降らせた。 チャンミンを弄ぶユノの指は止まらない… 「や…  やめて…  ァ…  ッフゥ…」 「ほんとにやめていいのか? え?」と言って チャンミンから指をパッと離し、挑発するよな目で見た。 チャンミンは思わず体から離れたユノの指を 引き戻したい衝動にかられ 手でくうをつかんだ。 「フフ…欲しいんだろ?正直に言ってみろよ!チャンミナ やめないで、もっと、もっとって言ってみろよ」 「チャンミナ…どうして欲しい?」ユノが意地悪い目でチャンミンを見る。 チャンミンは肩で息をしながら、キッとユノを睨みつける。 「いいねぇーその眼…ゾクゾクする」 唇を重ねながら、言葉を移す。 「言ってみろよ…チャンミナ」 下腹や内腿背中や尻を撫でまわし、一番触れて欲しい肝心な所には触れないユノに しびれをきらし、チャンミンはユノの手を掴み、触れて欲しい所まで 導いた。 それでもユノはチャンミンの胸に顔を埋め綺麗な胸筋の上にある 可愛い突起を舌で刺激するばかりで チャンミンにある手は包み込んだままだった。 「…ん〜  … ヒョン…  お願いだから…  ァ…」 「ん?何?聞こえないね、何だって?」 そう言いながら、チャンミンを包み込む手を離したり、触れたりとを繰り返した。 「… あーもう嫌だ…  ちゃんと… お願いヒョン … ちゃんと…」 腰をくねらせ、涙目で懇願するチャンミンをひっくり返して うつ伏せにし、後ろからのしかかり、いきり立ったユノを擦りつけながら チャンミンを握りしめた。 耳元で「チャンミナ…どっちが欲しい?」いやらしく囁いた。 ベッドに突っ伏して、シーツを握りしめたチャンミンは すでに全身から湯気が立ち上るくらいに上気していたが なおも耳まで真っ赤になった。 シーツをギュッと掴んで、顔をベッドに向けたまま 「…………」 ユノは優しくチャンミンの髪を撫でながら、顔に耳を近づけた。 チャンミンはユノの耳に唇を触れながら 「ヒョンが欲しい…」消えそうな声で囁いた。 言葉の全部を聞き終わらないうちに ユノはチャンミンの腰を軽く持ち上げて優しく入り込んだ。 「あ!」途端にチャンミンの身体がビクンと跳ねた。 待ち焦がれた悦びがチャンミンの身体を満たしていく。 ユノの指がチャンミンを優しく撫でる。 さっきとは打って変わって、チャンミンの欲しかったところを容赦なく攻め立てた。 「あーヒョン!ヒョン!ユノヒョン!!」前と後ろの両方をいたぶられ、 チャンミンは遠のきそうになる意識を必死で堪えた。 猛々しいユノに突き上げられるたびに増すユノへの愛しさ。 ヒョン…ユノヒョン…ユノヒョンが好きだ… 溢れる想いが涙となって零れた。 ギューっとシーツを握りしめ、顔を埋め涙を堪えて漏れる吐息だけを吐き出した。 耳元で囁くユノの声が苦しげになる。 「ウ… チャミナ!チャミナ!好きだ!好きだよ!」 ほぼ同時に二人は果てた。 チャンミンのすぐ横にドサリと崩れ落ちたユノは 片手でチャンミンの髪を撫で、 まだ、ギュッとシーツを握りしめたまま、ハァハァと荒い息をするチャンミンの 顔に近づいた。 「チャンミナ…?泣いてたのか?」ユノは驚いたように チャンミンの目尻に残る涙を唇で吸い取った。 チャンミンはベッドに突っ伏したまま動けなかった身体をようやく動かし、ユノに抱き付いた。 「ヒョン…  僕  不安なんだよ… ずっとずっと不安な気持ちが消えないんだ…」 ユノの胸に顔を埋め、きつく抱きしめたまま、チャンミンは続ける。 「ソギョ先輩みたいにグラマーな胸もないし…それに…それに 僕こんなの初めてで…  ヒョンが喜ぶ事なんて、どうすればいいかわからないし… すぐに嫌になって、僕から離れて行っちゃうんじゃないか… って… ユ…  ユチョンヒョンとアメリカで逢って、より戻したんじゃないか?って…」 チャンミンは溜まっていた不安を一気に吐き出した。 「ユチョナ?」思わずチャンミンを胸から離し、顔を見た。 「何で、今更そんな奴の名前が出てくるんだ?」 「だって、ヒョンがアメリカ行き決まってから、何度もユチョン、ユチョンって言ってたし… 同じ時期にアメリカにいたんだよ…それに…それに… リュックも一緒だった………」 「リュック〜〜〜???  あーだから、おまえ誰かに逢ったか?って 訳わかんない事言ってたんだな…」 「ハッハッハ!!!!」ユノはお腹を抱えて笑った。 「おまえ俺と何年一緒に暮らしてんの? 俺が誰といつ一緒に買った物か 覚えてると思う? おまえが嫌なら、あのリュック捨てろよ! 他にもあいつらと一緒のもんがあって、おまえ覚えてるんなら、捨てたらいいさ。 おれは全く覚えてない。 今はこれしか記憶にないね」 ユノはそう言って左手のリングをチャンミンに見せた。 「それに… チャンミナ… 何がそんなに不安?俺の愛し方がまだ足りない? 頑張ってるつもりなんだけどなぁ〜」そう言ってチャンミンの頬を撫でた。 「違うよ!そんな意味じゃないよ!」頬を撫でる手を払った。 「じゃぁどんな意味なんだよ!」 「だ、だから…それは…」返事に困るチャンミンに ユノは優しく「チャンミナは誰が好き?」もう一度片手で頬を包み込む。 「…ユノヒョン…」チャンミンは俯いて答えた。 「俺はチャンミナが好き。一番好き」そう言いながら顔を近づける 「それでいいじゃないか…チャンミナ…それだけじゃダメなのか?」 軽く唇を合わせる。 「ずっとずっと、四六時中好きだって言ってないと、信用してもらえないのか?」 チャンミンはそう言われて、打ちのめされたような気分になった。 どうして、ユノヒョンを信じられなかったんだろう… 何がそんなに不安だったんだろう? ずっと優しくて、守ってくれて、好きだって言ってくれて、今はお前だけだって言ってくれたのに こんなに愛してくれるのに… 「ごめん、ヒョン。  そうだよ…  僕…なんかおかしくなってたよ。 冷静じゃなくなって、ドンドン変な風に考えて… ごめんヒョン」 そう言って、ユノに抱き付いた。 ユノは、黙って抱きしめたチャンミンの髪を撫でた。 ユノは韓国マイケル追悼公演を目前に控え、小さな頃からの憧れだったマイケルジャクソン …その彼の追悼公演の主役というプレッシャーからか、イライラする日々が続いていた。 アメリカ人スタッフとのコミュニケーション不足… 少し自分を見下したような態度に今まであまり感じた事のなかった 不安と苛立ちを経験していた。 楽しい事や嬉しい事は楽しげに何でも話すユノだが 辛い事、苦しい事になると一気に寡黙になるユノだった。 チャンミンはユノのそんな様子を心配して、気をもむ日々を過ごしていた。 「ただいま」 深夜遅くにリハーサルを終えて帰ってきたユノの声は暗く沈んだものだった。 「おかえり」努めて明るくチャンミンは答える。 「ヒョン、今日は参鶏湯作ってもらって、持って帰ってきたよ。少し食べる?」 可愛い笑顔でそう言うチャンミンに ユノは心がポット温かくなり、思わず抱き寄せ頬にキスをした。 「ありがと、チャンミナ…でも疲れたから風呂はいって寝るよ…」 「…うん…じゃぁー朝食べて元気出してよ…  寒くなってきたから、ちゃんとお湯に入って 温まらなきゃダメだよ」そう言うチャンミンに 「…わかってるよ…」  小さな声でうるさいなぁ〜という感じでユノは答え 浴室へ消えた。 …しまった…  口うるさく言っているつもりではなく、心配で言ったのだけど、 今はあまりゴチャゴチャ言わない方がいいな… イライラするユノを感じているチャンミンはそう思った。 しばらく、ただついているTVをボーっと見ていたチャンミンはふと 「ヒョン、遅いな…いくら長風呂だからっていっても長すぎないか?」 心配になったチャンミンは浴室の外から声をかけた。 「ヒョン!ヒョン! 大丈夫?」 ……    返事がない。 慌てて、ドアを開けると、浴槽の中に口元まで沈み込んで 眠っているユノがいた。 「ヒョン!ヒョン!こんなとこで寝てたら、溺れて死んじゃうよ!ヒョン!起きて!」 チャンミンはユノの肩をゆすって叫んだ。 ハッと目を覚まし、立ち上がったユノは 「あーわりい、わりい、寝ちまってたな」 そう言って浴槽から出て、外へ出ようとした 瞬間、フラフラと倒れそうになった。 そばにいたチャンミンが咄嗟に腕を掴み、事なきを得たが 一人だったらと思うと、チャンミンは血の気が引いた。 バスタオルでユノをくるみ、抱きかかえて寝室へ運んだ。 ベッドにドサッと腰をかけて、ユノは 「のぼせただけだから。チャンミナ大丈夫だから」 そう言いながら、また立ち上がり、歩きだそうとした。 すぐさまチャンミンが止め、ユノを座らせた。 「どこ行くんだよ!そんなフラフラしてんのに」 「いや…水飲もうと思って…」 「取ってくるよ!!!!こんな時に遠慮なんかすんなよ!」 「わりー」 全く…いつも偉そうに命令するくせに、こんな時に遠慮なんかして! そう思いながらも「ほんとに大丈夫かな〜ヒョン」心配なチャンミンだった。 「アー疲れた」体も髪も良く拭かずにベッドに横になるユノ 「ちゃんとこの大役やれるかな… バカにしてるあいつら見返す事できるかな…」 ユノはいつになく弱気になっていた。 「はい、ヒョンお水…  前にオモニ(お母さん)が送ってきてくれた漢方薬 これも一緒に飲んどきなよ。ちょっとは元気になるよ」 チャンミンはミネラルウオーターと漢方薬を渡した。 「おまえにって送ってきてくれたのに…  悪いな…」そう言って、一気に飲み干した。 「ヒョン、ビショビショのままじゃないか…ちゃんと拭かないと風邪ひくよ」 そう言うと、タオルでユノの体と髪を拭き始めた。 じっとうつむきされるがままのユノだった。 チャンミンはユノの下着とパジャマを探し 「はい、ヒョン」と渡す。 「うん…  」と黙ってユノはそれを着る。 ベッドの端に腰かけたユノの前に立ち、チャンミンは上から ふわりとユノの背に手を回し、片手でユノの頭を引き寄せた。 「ねぇ〜ヒョン、僕ヒョンのマイケル …ユノケルが楽しみでワクワクするよ。 きっと世界中のユノペンが楽しみにしているよ。 いつものようにカッコよくて、自信満々でドヤ顔してるヒョンの顔が目に浮かぶよ… 僕、ヒョンのダンスが大好きだよ。いつも見とれちゃうんだ」 チャンミンはそう言って、ユノの頭にキスをした。 「チャミナ…」ユノはチャンミンの腰に手を回し、引き寄せられたまま顔を埋めた。 ありがと…チャンミナ…頑張るよ… おまえが好きな最高のダンス見せてやるよ! そう心の中で誓うユノだった。 コンコン   コンコン…  ユノの咳き込む声でチャンミンは跳び起きた。 「ヒョン!どうしたの?のど痛いの?」 隣のベッドで寝ているユノを覗き込むと 真っ赤な顔をして、ハァーハァーと肩で息をしている。 「うわ〜!ヒョン!熱でたの!??」 チャンミンはユノのおでこに手をあてた。 「あつい…」 そのチャンミンの手で目が覚めたユノは「チャミナ  大丈夫だから」と言って起き上がった。 ……大丈夫なんかじゃ、ないじゃないか…… 起き上がったユノの体に触れて、体温がかなり高い事を感じたチャンミンはそうつぶやいたが… やめろ!と言っても、休めと言っても無駄だと言う事は長い付き合いの中で チャンミン自身が一番よく知っていた。 …  さぁどうするかな… … 「ヒョン、病院行くくらいは時間あるの?」 「朝のうちなら行けるかな… 注射でも打ってもらうよ」 「そうだね、マネージャーさんに電話しとくよ」 「ああ…頼むよ…明日には下がるさ…」 いよいよ明日が本番の日だった。 「昨日の参鶏湯温めるから、食べなよ」 ユノは鉛のように重くなった体にムチ打つように テーブルに座った。 「ああ…  」そう言って、テーブルの上にあった チャンミンの手をギュッと握った。 チャンミンは少し恥ずかしそうに微笑み 参鶏湯を温めるために立ち上がった。 二人のそれぞれの仕事を終えて、二人が帰宅したのは やはり深夜遅くなってからだった。 「… ヒョンはまだか …   大丈夫だったのかな 明日も寒くなるみたいだけど、ヒョン熱下がったかな」 先に帰ったチャンミンは心配げにそうつぶやいた。 何か作っておいた方がいいかな…食欲あるかな…ヒョン落ち込んでたの、ましになったかな… 頭に浮かぶのはユノの事ばかりだった。 ガチャ  玄関の音がすると同時にチャンミンは駆け出した。 「ヒョン!大丈夫?」 そこには今にも倒れそうになりながら、必死で立っている顔面蒼白のユノがいた。 「チャンミナ… ただいま」 そう言いながら、フラフラとチャンミンの肩に手を伸ばし、体を預けた。 「ヒョン!」 ユノの体を支えるように抱きかかえ、 「熱下がらなかった?」チャンミンはユノを覗き込んで聞いた。 「一度下がったけど、また上がってきたみたいだ」 「寝た方がいいね…薬は飲んだ?」 「ああ…」 「明日までに下がるといいんだけど…」 パジャマに着替え、布団に入るユノの体が震えていた。 「寒いの?ヒョン?」 「だい…じょうぶ…」そう答える声も震えている。 「うつるといけないから、離れてた方がいい…」 ユノは布団に潜り込みながら、チャンミンに向かってそう言った。 「ヒョン、こんな時に何言ってんだよ。 水持ってくるよ」 チャンミンはミネラルウオーターを冷蔵庫から取り出しながら … ヒョンはこんな時にまで人の事心配して… 僕、ヒョンみたいにクリスチャンじゃないけど… ヒョンを守ってる神様… どうか明日のコンサートまでに熱が下がって ステージが上手くいきますように。お願いします…  目を閉じ心の中で祈った。 寝室に戻りチャンミンは布団を頭までかぶり、 見えなくなっているユノに声をかけた。 「ヒョン、水ここにおいとくよ… もっと布団かけようか?」 すでに眠りに入ったのか、ユノからの返事はなかった。 「…   う   …  う…  み ず  …  」 ユノのうなされる様な声にハッとなり、ベッドのそばに椅子を持ってきて 毛布にくるまりウトウトしていたチャンミンは ユノを覗き込んだ。 「ヒョン のど乾いたの? 水飲む?」 ペットボトルの蓋をあけ、ユノに飲ませようとしたが ユノは目が覚めていないのか、意識がないのか チャンミンの問いかけに反応しない。 「ヒョン!水だよ!」そう言ってもう一度飲ませようとするが 口から零れて、枕を濡らすばかりだった。 「どうしよう…困ったな…  」しばらく考えたチャンミンは そうだ。と思いついたように おもむろにユノの眠るそばに潜り込んだ。 苦しげにハァーハァーと息をするユノのくちびるに自分のくちびるを重ね 言葉をのせる。 「ヒョン、水だよ…」 それには気づいたユノは 「チャンミナ…」そばにいるチャンミンを力なく引き寄せた。 チャンミンはペットボトルの水を口に含み、少し目覚めたユノに 口移しで流し込んだ。 ゴクリとユノが水を飲み込む音が聞こえた。 …  あー良かった …  飲んだ … 「ヒョン、もっといる?」 「ああ…  冷たくて うまい …」 チャンミンはそう言われ、嬉しそうにもう一度 水をユノに流し込んだ。 「チャンミナ ありがと… 生き返ったよ」 ユノはそう言うと、チャンミンの頭を自分の胸に引き寄せ、 おでこにキスをした。 「ヒョン… このまま ここにいてもいい?」チャンミンはユノに抱き付いたまま聞いた。 「…   ダメだ …  って言わなきゃいけないのに … おまえを抱いてるとあたたかい…  さっきまでブルブル震えてたのに ドンドン温かくなるよ… チャミナ…」 「僕が温めてあげるよ、ヒョン」チャンミンはユノをギュッと抱きしめ、背中をさすった。 「何もしてやれないけどな…」 目を閉じたまま、力なくフフっと笑ったユノに 「何言ってんだよ!こんな時に」そう怒ったように言いながら 冗談言えるくらいになって、良かった。 チャンミンはそう思った。 ユノは安心したようにまたすぐに眠りについた。 チャンミンはユノの熱い体を一生懸命さすった。 …ヒョン、こんなに熱い体してるのにまだ寒いって… 熱全然下がってないんじゃないかな… ジリりリり…  ユノの目覚まし時計がけたたましく鳴り響いた。 「うわ!びっくりした!」チャンミンは驚いて、飛び起きたが 目の前のユノはまだうなされる様に眠っている。 チャンミンはおでこに手を当て、 「あーまだ全然下がってないや…本番の日だっていうのに…可哀想なヒョン…」 ずっと頑張って準備してきたユノの努力を思うと、胸が締め付けられそうだった。 しかし、熱があっても行かないわけにはいかない事は チャンミンも十分にわかっている。 張り裂ける様な想いで 「ヒョン…ヒョン… 朝だよ… 本番の日だよ」 肩を揺すり、ユノを起こす。 「……  チャンミナ …  おまえ一緒に寝てたのか? うつるから離れとけって言ってたのに…」 「ごめんよ…ヒョン 寝苦しかった?心配で寝れないから潜り込んじゃったんだ」 下から上目使いで見上げるチャンミンに ”あー元気だったらこのままいっちゃいたい… こいつほんとに男なのか? この可愛さはいったいなんだ?”熱があるにも拘わらず、そんな事を考えるユノだった。 出かける用意をしながらユノはそばにいるチャンミンに 「チャンミナ…ちょっと元気になったよ。おまえがそばで寝てくれたからかな」 そう言って、チャンミンの頬をつねった。 「そうだといいけど…まだ体は熱いよ…」頬をつねるユノの手を握り返した。 「また注射打ったら、一時はさがるから… チャンミナ見に来てくれるんだろ?」 「うん、ミノと行くよ」 「キュヒョンじゃないのか?」 「あいつはスケジュールがあわなかったんだ」 「なんか寒そうだから、あったかくして来いよ」 「何言ってんだよ、ヒョン。 高熱のある人に言われたくないね」 「そうだな…」  そう言って二人で笑った。 「さぁ!気合い入れて頑張る!チャンミナ見ててくれよ!頑張って踊ってくるからな!」 「うん!ヒョン頑張って!ちゃんと見てるからさ」 「おまえのために頑張るよ」 そう言うユノにチャンミンは驚いた。 「ヒョン!そんな事言っちゃファンに怒られるよ。 僕殺されちゃうよ」 「ハハ!お前が殺されたら、俺が困るな」 「そうだよ、ヒョン、世界中のユノペンのために踊ってよ… ヒョン、今日はあのリングしていかないだろ? 今日は僕がしていくからさ」 「ああ、そうだな、しないけど、俺の中ではいつも光ってるさ」ユノはそう言って 左手を上にかざした。 … ヒョン  …  カッコいい〜 キザだけど、ヒョンが言うとなんてカッコいいんだろ… チャンミンは心の中でドキドキしながらそう思った。 「じゃぁ行ってくるよ。チャンミナ」 ギュッとチャンミンを抱きしめた。 チャンミンは抱きしめたユノの体がすごく熱い事が気になったが どうする事もできず、ただ明るく送り出すしかなかった。 ユノは迎えの車に乗り込んですぐに 「先に病院に行ってくれますか」そう言い シートにぐったりと横になった。 病院で熱を測ると39℃もあった。 昨日から全然下がってない… 「先生!何とか少しの時間でも下げてください」 「こんなに熱あるんだから、安静にしてなきゃどうなっても知らないよ!」 「安静にしていられないんです。お願いします!終わったら何日でも安静に寝てますから」 「とりあえず、点滴して、熱覚ましの坐薬しか方法はないね!だから、この前から安静にしろって 言ったのに」医者は怒っていた。 「すみません…先生」 「全く、君はいつも無理し過ぎだよ!若いからって、無茶してたら大変な事になるよ!」 ユノは焦っていた。このままではフラフラしてダンスどころではない… 何とか少しでも下がってくれたら… 点滴をして、坐薬を入れて、病院を後にした。 本番まであと4時間 舞台ではすでに他のメンバーのリハーサルが始まっていた。 「おはようございます。すみません遅くなって!」 ユノは他のメンバーやスタッフに謝って回った。 最近ようやくユノの実力を認め、打ち解けたアメリカ人メンバーやスタッフは 笑顔でユノの肩を叩き、 「大丈夫!OK!頑張ろう!」と答えてくれた。 そして、やたらとボディータッチしてくる黒人のプロデューサー ケビンも ユノの両肩を揉みながら 「ユノ、熱があるんだって?大丈夫かい?」と聞き 後ろからおでこに手を回して、 「まだ熱いじゃないか?…」と言った。 ユノは「大丈夫です。病院で注射打ってもらったので、すぐに下がってくると 思います!」そう言いながらくるりと踵を返し、距離をあけた。 リハーサルに加わったユノは初めの間は体が重く、フラフラして 思うように動けなかったが、繰り返すうち いつものキレが戻り、調子が上がっていった。 本番まであと2時間 控え室で待機するメンバー そこへチャンミンとミノがやってきた。 「おはようございます、お疲れ様です」 そう他のメンバーに挨拶をして、二人はユノのそばに近寄った。 「ユノヒョン、どうです?熱は下がりましたか?」そう言いながら、チャンミンは思わず おでこに伸ばしそうになる手を引っ込めた。 ミノも心配そうに 「ユノヒョン、大丈夫ですか?」と声をかける。 「あー二人共ありがとう。寒いのに来てくれたんだな。 大丈夫だよ、薬が効いてきたのか下がったみたいだ」 そう言って、ユノはガッツポーズをした。 3人で話している所へ、ケビンプロデューサーがやってきて 「ユノ…こちらは?」と二人を見て聞いた。 「あ!ケビンさん、東方神起メンバーのチャンミンとシャイニーのミノです」 二人は順番に「チャンミンです」「ミノです」と言いながら ケビンと握手をした。 「へ〜チャンミンっていうのは、君だったんだー …フ〜〜ン  またよろしくね」 そう言うとケビンはユノの頬に手を当てて、「熱下がったかい?」と聞いた。 ユノは咄嗟に身を引き「大丈夫です!!」と強い口調で言った。 ケビンは肩をすくめてその場を立ち去った。 チャンミンはその様子を見て、カッと熱くなり、背筋がゾクッとした。 ユノは目を逸らすチャンミンに気づき、チャンミンの左手をとり 「チャンミナ、もう大丈夫。ちゃんと約束守るから」 そう言って、チャンミンの左手にある指輪を回した。 チャンミンはそばにいるミノを意識して、ユノの手を軽く握り返して、 すぐに離した。 軽くうなづき、「ええ…頑張ってください、ヒョン」 「じゃぁ僕らは客席から応援しています」 このまま側に居たい…  側でヒョンを支えていたいのに… そんな想いを断ち切るように控室を後にした。 「ユノヒョン大丈夫ですかね?…まだ辛そうでしたよね? それにあのいやらしー目でユノヒョンを見てた、プロデューサー …あれ、やばいですよね…完璧ユノヒョン狙われてますよね」 ミノは何も知らずにチャンミンの気持ちを逆なでするような事をグサリと言った。 「あーやっぱり、おまえもそう思った?」チャンミンはそう言いながら自分の気持ちを 落ち着かせようと、左手の指輪を触った。 本番 直前 ユノは舞台そででいつものように、十字を切った。 「誰も怪我する事なく、ステージが無事に終わりますように」 あまり下がっていないであろう熱も 今のユノには関係なかった。 広い会場に集まった沢山のファンをそでから見渡し、 全神経を集中し、モチベージョンをあげたユノには もう何の不安も迷いもなかった。 「頑張るよ!チャンミナ」左手薬指にキスをした。 ドドーン!! 大音量のバンドの演奏が始まり、 キャー    ファンの悲鳴にも近い歓声が響き渡った。 マイケルジャクソンの衣装を身にまとい、輝くばかりのオーラと共に ユノが登場すると、歓声は一際高くなり、会場は興奮のるつぼと化した。 ユノのパフォーマンスは完璧だった。 一挙手一投足に観客が泣き叫ぶ。 チャンミンはその様子を肌で感じ 「ヒョン、良かった…  頑張った甲斐があったね… みんなにこんなに喜んでもらって… 僕も早くステージに立ちたいよ…」そう思いながら、無意識に ずっと指輪を触っていた。 ミノが「チャンミンヒョン、その指輪よっぽど大事なものなんですね? さっきからずっとそれ触ってますよ」 「え?」パッと指輪から手を離し 「…いや…そんな事はないんだけど、ちょっと触るのがくせになってて…」 しどろもどろに答えるチャンミンを気にせず ミノは 「それにしてもユノヒョンのパフォーマンスは最高ですね!! ほんとに熱あったんですか?信じられませんね」興奮した様子で言った。 「ああ、39℃はあった…  もしかしたら、それ以上に上がってたかもしれない」 チャンミンは昨日の夜抱きしめて眠ったユノの体の熱さを思い出した。 一分の隙もミスもなく、ユノのステージは終わった。 観客は興奮で涙している。 スタッフ、メンバーも ユノの熱があるのにも関わらず、普段通りのいやそれ以上の パフォーマンスだったことに感激し、賞賛の拍手を送った。 「皆さん、ありがとうございました。そしてご心配をおかけして ほんとにすみませんでした。こうして無事にステージを終えられたのは 皆さんのご協力によるものです。本当にありがとうございました」 そう言って、深々と礼をし、皆に感謝の気持ちを表すユノに スタッフみんなの拍手はやまなかった。 シャワーを浴び、着替えて出てきたユノを待っていたのは ケビンだった。 一瞬ドキっとしたユノだったが、一応彼のおかげでここまで 出来た事もあり、 「ケビンさん、ほんとにありがとうございました。成功できて良かったです」 握手を求めた。 ケビンはその手を無視して、ハグをしてきた。 肩を叩き、 「いやーほんと良かったよ!最初はこんな奴に何が出来るんだ!なんて思ったけど 君に声をかけて正解だったよ!!また一緒に仕事しようじゃないか」 「はい、ありがとうございます」 「ユノ、今日はまだ熱もあるだろうから、今度飯でもどうだい? 君の可愛いチャンミンも一緒に」 「君の可愛いチャンミンも一緒に…」 あの言葉はいったいどういう意味だったんだろう? ドキっとして、咄嗟になんて答えたらいいかわからなくて とりあえず、「ありがとうございます。元気になったら連絡します」と答えたら 「そんなに長くはこっちにいられないから、なるべく早く元気になってくれることを祈るよ 次の仕事の事も色々相談しようじゃないか」そう言って、 意味ありげな顔してニヤッと笑ってたけど… あれは絶対だよな… あいつはやばいよ… しかもチャンミナも一緒にだなんて… 帰りの車の中、ユノはまだ熱のある頭で必死に考えた。 君の可愛いチャンミン…  って…なんで分かった? あー頭が痛い。 せっかくステージが大成功で終わってホッとしたっていうのに… チャミナ家に帰ってるかな… ミノと一緒だったから飯でも食いに言ってるかな 久しぶりに早く帰るのに、チャンミンがいないんじゃ…  そんな気持ちになり ユノはチャンミンに電話をかけた。 「もしもし、チャミナ?今どこ? もう家に帰れるんだけど…」 「ヒョン!?大丈夫だった? 大成功おめでとう!!!良かったねヒョン。 もう帰れるの?じゃぁ僕もすぐに帰るよ」 「いいのか?ミノと一緒だったんじゃないのか?」 「いいんだよ。もう飯は食べ終わったし。ミノなんだから」 「ハハ… そのいいぐさ…気の毒なミノだな。謝っといて」 「うん、わかった。じゃぁ急いで帰るから」 席をたって電話を受けたチャンミンはミノのいる場所に戻り、 「ミノ悪い、ユノヒョンがもう帰ってくるから、俺も帰るよ。ユノヒョンがミノに謝っといてってさ」 「あ、そうなんですか?別にいいですけど、チャンミンヒョンやけに嬉しそうですね? なんか妬けるなぁ〜」 「な、何言ってんだよ!バカな事言うなよ!ユノヒョン熱あったから、大丈夫かな? と思って早く帰ったほうがいいかな…って…」 「……  ヒョン、冗談ですよ…  そんな必死に言い訳すると余計に怪しいですよ… まじっすか?」 チャンミンは顔が真っ赤になったのを見られまいと、すぐ立ち上がり、サングラスをかけた。 「帰るぞ!!!」後輩には偉そうなチャンミンだった。 「ただいま」  まだ灯りの灯らない部屋に入り ユノはソファーにドサッと崩れるように座った。 あー良かった。成功してほんとに良かった。 長い間張り詰めていた緊張感が一気に溶けていくのを感じ ユノは眠くなった。「チャミナはまだかな…」 「アーダメだ…眠い」ドンドンとユノは夢の中へ引き込まれていく。 ケビンとチャンミンが食事している…嫌そうな顔のチャンミン いやらしく笑うケビン…  やめろ!そんな目でチャミナを見るな! 気持ちの悪いそんな目で俺のチャミナを見るな!!! 「ヒョン!ヒョン!」遠くでチャンミンの声がした。 ハッと目が覚めたユノはチャンミンが目の前に立っているのを見て 「チャミナ!何もされなかったか!?」と叫んで チャンミンを抱きしめた。 「どうしたの?ヒョン?何もされなかったか?って誰に?何を?」 訳が分からず、ユノに聞き返す。 「…  夢を見てたよ …  夢だよな? チャミナ平気だよな? 」 「???何が?」 「いや、いいんだ。ミノと一緒だったんだよな? それならいいんだ」 チャンミンはユノをギュッと抱きしめ返して、 「そうだよ、ヒョン。ミノと一緒でヒョンが帰ってきたから帰るって言ったら 嬉しそうに帰るんですね。って言われて…  フフ  つい顔に出ちゃって… 困ったんだよ」 ユノはチャンミンの頭を抱えて撫で、…チャミナ…お前を守るにはどうすればいいんだろ… ケビンのいやらしく笑う顔が浮かんでは消えた。 「ヒョン?どうしたの?まだ熱あるみたいだね…体が熱いよ…」 「あーまだ下がってないんだ。当分休んで寝てないと、ほんとにあの怖い先生に ぶん殴られるよ」 「そうだよ、ヒョン。明日からゆっくり休んでよ」 「そうするよ、チャミナ」 ステージが成功した事での安堵感、やり切った達成感、 そして、ケビンの意味不明な不安な言葉…そんないろんな感情が ユノを一杯にして、チャンミンを抱きしめたまま離せないでいた。 そんなユノに抱かれるがままにじっと身をゆだねるチャンミン… ヒョン疲れたんだろうな… お疲れ様…ヒョン…  チャンミンはユノの背中をさすった。 しばらくそのままでいた二人だったが、チャンミンが 「ヒョン寝た方がいいよ… 熱また上がったら困るし…」 「そうだな、おまえにうつしてもいけないものな…ってもう遅いか?」 ユノはそう言ってようやくチャンミンを離した。 とりあえず、今日はゆっくり寝て、またあいつの事は熱がちゃんと下がってから 考えよう。 ユノの熱がようやく下がり、医師の活動再開の許可がおりた日 マネージャーがユノに 「ユノさん、ケビンさんが食事に行こうって、チャンミンさんも一緒に…」 ユノは忘れようとしていた記憶を呼び起こされ 一気にテンションが下がった。 「あいつ…忘れてなかたのか…このままなし崩し的に忘れてくれたらと思ってたのに」 「スタッフも誰か一緒に行く?あの人ちょっとやばいんだけど…」 そう嫌な顔で言うユノにマネージャーが 「はい、スタッフも一緒にと言う事でした」 …  取りこし苦労だったのか … 「わかった、じゃぁ行くよ…事務所にとっても必要なラインなんだろ?」 「さぁそこまでは僕にはわかりませんけど、専務からの指示ですから そう言う意味も含まれているかもしれません」 その日の夜、レッスンを終えて帰ってきたチャンミンに 「チャンミナ〜おかえり…  どうだった?レッスン」ユノは大きく腕を広げて迎えた。 「ヒョン!もう起きてて大丈夫?熱下がった?」久しぶりに元気に起きて迎えてくれたユノに 驚き、嬉しそうに抱き付いた。 「ああ、明日から活動してもいいってさ」 チャンミンの表情がパッと明るくなった。 嬉しそうにニコッと笑うチャンミンを見て、ユノはたまらず引きよせた。 楽しげに唇を重ねる。 「チャンミナ〜なんか久しぶりだな…」 「…  フフ  そうかな …」 「そうだよ〜チャンミナ 久しぶりじゃないかー 俺なんか熱があってもずっと我慢してたんだから」 「ハハハ  …ヒョンそんな事ばっかり考えてるから熱下がらなかったんだよ」 「そうか…そうかもしれない…チャミナにあんな事して、こんな事して…とか 考えてたら一向に熱下がらなかったな   ハハハ」 そう言いながら、チャンミンの手を引いて、寝室へと向かった。 ……  たっぷりと時間をかけて愛し合い、たまっていた欲情を吐き出した後 ユノはチャンミンの髪を撫で、玉のような汗が光るチャンミンの背中にキスをしながら 「なぁ チャンミナ … ケビンって覚えてる?」 チャンミンは驚いて、ユノをはねのけて、体を起こした。 「覚えてるも何も… あの時いやらしい〜目でヒョンを見て、ベタベタ触ってた奴だろ!?」 切れ気味にそう叫ぶチャンミンに 「やっぱり気づいてた?あいつがさ、チャンミナもスタッフも一緒に食事しないか?って 事務所通して言ってきたんだよ。 で、マネさんが行けって事は仕事みたいなもんだと思うんだけど… チャミナどうする?  嫌なら俺一人で行くけど…」 行かせたくない、あいつに逢わせたくないという思いでそう言ったが チャンミンはすぐには答えずに、しばらく考え込んだ。 また前みたいにあいつがヒョンを気持ち悪い目つきで見たり、ベタベタ触るのを 見るのは嫌だけど、…  でも人数多い方がそんな事しにくいかも しれないし…なるべく離れさせてやる。と考え 「僕も行くよ。仕事なんだから我慢するよ」 「そうか…  行くか…  じゃぁチャンミナ 俺から離れるなよ」 「わかってるよ!ヒョンこそあんな奴の言いなりになんかなるなよ!!!」 お互いがお互いの心配をして、不安になりながらも スタッフも一緒にだし、飯だけ食って帰ればいいよな… そんな軽い気持ちだった。  スタッフ合わせて10名くらいの食事会だと思い、二人が行ってみると ケビン側のスタッフ、 SM側のスタッフも合わせて 50名はいるだろうか?と思われるパーティだった。  二人は正直ホッとした。 これなら下手な事にはならないよな…  ユノはチャンミンを想い、チャンミンはユノを想い そう考えた。 ケビンは二人が来たのを見つけるとすぐに飛んで来て 「ユノ、ようやく熱が下がって良かったよ。もうアメリカに帰らなきゃいけないのに 君に逢えないのかと思ってハラハラしたよ」 あからさまにいやらしい目つきでユノを見て、顔の方に手を伸ばしてきたが ユノはさっと身を引いて離れ 「今日は呼んで頂いて、ありがとうございました」 と差し障りのない返事だけを返した。 「チャンミン、君もよく来てくれたね」そう言って チャンミンの肩に手を置き、2,3度揉むような仕草をした。 まさか自分に手が伸びてくるとは思っていなかったチャンミンは ふいな出来事に避ける事も出来ずに、ビックリした表情になった。 ユノは横でチャンミンに乗せられたケビンの手を払いのけたい衝動を抑え、 ケビンを睨みつけたが、ケビンは何事もなかったかのように 「じゃぁゆっくり楽しんで」と言い残し SMの専務たちがいる方に歩いて行った。  ケビンが離れて行った瞬間、チャンミンは眉を顰めて今ケビンに 触れられた肩の汚れを落とすように、必死で払った。 その姿を見たユノは、笑いながらまるでその肩を清めようとするかのように チャンミンの肩を何度も揉んだ。 …  ヒョン  … チャンミンは俯いて頬をあからめた。  何人かの挨拶が終わり、司会者はユノを呼んだ。 ユノは前に行き、挨拶をしながらも、チャンミンから目を離さずにいた。 しかし、またそれを横からじっと見るケビンもいた。  何事もなく時間が過ぎ、立食パーティの食事と飲み物を充分に楽しみ、 色々お世話になったスタッフと話すうちに、 二人共ケビンの事は頭から消えかけていた。  ユノはアメリカ人ダンサーとチャンミンはSMのスタッフと話していた。 チャンミンはスタッフに「トイレに行ってくる」と言い、 チラっとユノの方を見たがユノは気づかずに楽しげにダンサーと話しているので 「わざわざ言わなくても、いいか」 と思い、そのままトイレにむかった。 チャンミンがパーティールームを出てすぐ、待ち構えていた様に、 ケビンが後ろからやってきて、チャンミンの肩を組んできた。 チャンミンより背の高い、大柄のケビンにガッシリと肩を組まれて、 鍛えているとはいえ、華奢なチャンミンは離れる事も出来なかった。 「どうだい、チャンミン 楽しんでるかい?君の事はユノから聞いてたよ」 「え?」 …ヒョンがなんでこいつに俺の事を?… 不思議に思いながらも、ユノの名前が出てきた事で、 チャンミンの警戒心が少し緩んだ。 「仕事の事でちょっと話があるんだけど、いいかな」 そう言って、強引に奥の部屋に進もうとする。 しかしその言葉に対しては「仕事の事なら、事務所を通してください!」と 強く言い、離れようともがいた。 ケビンはなおも強くチャンミンの肩を抱き、耳元に顔を近づけ 「君の大事なユノの将来がなくなってもいいのかい?」そう言った。 驚いたチャンミンはケビンの顔をパッと見た。 ケビンはフフ… といやらしい笑いをうかべ、 「君ら二人の事は知ってるんだ… 君の態度次第では誰にも言わないし、 ユノの仕事もちゃんと用意してあるんだから」 「二人の事って何ですか?」そんな引っかけには騙されないぞ!という風に チャンミンは毅然とした態度で答えた。 ケビンは少し肩をすくめ… 「チャンミン、今日はペアリングしてこなかったのかい?」ニヤリと笑った。 チャンミンはカッと血が上り、言葉が出てこなかった。 …ダメだ、こんな奴の言う事まともに聞いちゃ… 何か言わなきゃ… そう考えるうちに、もがく力が抜けたのか、 ケビンはチャンミンを抱えるように、ドンドン進み奥の部屋の前まできた。 「ぺ…ペアリングって誰とペアだって言うんですか!?」必死で取り繕おうと したチャンミンだったが 「ハハハ…チャンミン… 何の言い訳にもなってないぞ。 ユノと君の二人に決まってるだろ」そう言い、チャンミンを部屋の中へ押し込もうとした。 チャンミンは言い当てられた事に驚き、ショックを受けたが、 このまま部屋の中には入れない。と渾身の力でケビンをドン!と押し 「ユ  誰か!誰か来てくれ!!!!」と大声で叫んだ。 「誰にも聞こえないよ」一度押されたくらいではビクともしないケビンは チャンミンの腕を掴み、部屋の中へ引きづりこんだ。 ユノはダンサーと話していた。 しばらく話し、ふと周りを見ると、さっきまでチャンミンと話していた スタッフが今は他のスタッフと話している。 「あれ?」部屋の中を見渡す… 飲み物のコーナー…  いない… 食べ物のコーナー…  ちがう… 「チャンミナ…」  専務たちのいる一角… 「どこだ?どこにいる?チャンミナ…」 チャンミンと話していたスタッフに速足で近づき 「チャンミナは?」と聞いた。 「あ、ユノさん チャンミンさんはトイレに行くって… でも遅いな…」 「トイレか…」 しかし、ユノはハッと気づき、ケビンを探す。 チクショーどこだ!  あいつ!ただじゃおかない!! ユノはSMの専務の所に走る。 「専務!俺はチャミナを守りますから!後はそっちで何とかしてください!」 そう叫び、返事も聞かずに走り出した。  チャンミンは部屋の中に押し込まれ、倒れた。 「この変態!おまえユノヒョン狙ってたんじゃないのかよ!」 「おやおや、変態呼ばわりか?そうだよ、初めて見た時から ユノを狙ってたさ、こっちではどうだか知らないけど、 アメリカではユノはゲイに大人気なんだよ。 そんな彼がどんな子を好きなのか興味あってね〜 いつも観察してたんだよ。 左手の指輪を大事そうに見てはキスして、祈りをささげて… スタッフにしょっちゅう「チャンミン」って言ってたな。 僕には「チャンミン」っていうのが女なんだか、男なんだか分からなかったから てっきり可愛い女の子なんだと思ってたよ。 そして、こっちに来てみたら、 どうだい…  ハハハ ユノと同じ指輪を左手にしてきて、大事そうに触ってたのは チャンミン…  可愛い男の子だったのさ。 そして僕は、ユノが可愛くてたまらない君を、いじめてみたくなったのさ。 そう言いながら、ケビンは倒れたチャンミンの両腕をとり、床に押し付け キスをしようと、顔を近づけた。 が、チャンミンは必死で顔を横にふり、ケビンの顔を避ける。 「しょうがないね〜」ねっとりとした口調で言い、 チャンミンの首すじに唇を寄せた。 「ちくしょーー!!やめろーーーーーーー!!!!ヒョン!ユノヒョン!!!!!」 チャンミンは必死の想いで叫んだ。 ユノは廊下に出て走った。 どこだ!? どこの部屋に隠れた!!!! そこへSMスタッフが血相を変えて飛んで来た。 「ユノさん大変です!!チャンミンさんがケビンさんに連れ込まれました!! 大声で叫んでました!一番奥の部屋です。僕鍵もらってきます」 ユノは怒りに震えながら全速力で一番奥まで走る。 「チャンミナ!!!」 …ヒョンの声だ… 「ヒョン!ここだよ!」そう叫ぶチャンミンの口を塞ぐように ケビンは唇を押し付けた。 ガリッ 「いた!」ケビンの口から血が流れる。 チャンミンがケビンの唇を噛んだのだ。 押さえられていた両腕が離れ、チャンミンは跳び起きて、 ドアのカギを開ける。 ちょうど、ユノが部屋の前に駆け付け、チャンミンを外に出し 自分は部屋の中に入り、何も言わずにケビンに一撃 回し蹴りをくらわした。 ケビンの脳天に直撃した回し蹴りは一撃で決まり、ドサリと巨体が倒れた。 ユノはすぐに廊下で震えながら立ちすくむチャンミンを抱えて、廊下を進む。 パーティールームには戻らずに、そのままエレベータに乗った。 ドアが閉まるや否や、ユノはチャンミンを強く抱きしめ、 「チャミナ…すまない」そう言ってチャンミンの頭を抱え込んだ。 チャンミンは恐怖からか言葉が出なかった。 「ヒョン…」 「すまない、チャミナ」繰り返し繰り返し謝るユノだった。 「すまない、チャンミナ…」 ギュッと抱きしめ、何度もそう言うユノに チャンミンは絞り出すように 「ヒョンのせいじゃないよ…」そう言った。 まだ微かに震えるチャンミンを抱き、ユノの胸は押しつぶされそうだった。 「チャミナ… 大丈夫だったんだろうか? 俺は間に合ったんだろうか?」そう思い、口に出して、聞きたかったが 震えるチャンミンの気持ちを考えると、黙って抱きしめる事しか 出来なかった。 「ヒョン… 早く帰ろう …」 「ああ」 二人はタクシーを拾い、二人だけで家路に着いた。 車の中で恐怖心が治まってきたチャンミンは、 段々と怒りでイライラしてきた。 … ちくしょー もっと力があれば、あんな奴押しのけられたのに! ヒョンみたいに合気道でも習ってれば、やっつけられたのに!! うー腹が立つ! それにしても、ヒョンカッコよかったなぁ 一発であんなでかい奴ノックダウンさせて…恐怖も忘れて、 見惚れたよ… まじカッコいい… … そういえば、あいつヒョンの将来がどうなってもいいのか!みたいな事 言ってたけど… ヒョン僕の為にあんな事しちまって、大丈夫なのかな…  チャンミンがそんな事を考えているとは知らず、 イライラと考え込む様子のチャンミンを見たユノは …  ショックだったよな … そりゃあんな大男にのしかかられたら いくら男だっていったって、怖かっただろうな…  可哀想に … ユノは運転手に見えない所でチャンミンの手を握った。  家にたどり着いてすぐ、シャワー室に駆け込むチャンミン… それを悲しい目でみつめるユノ… しばらくシャワーの水音だけが響いていたが 「ヒョン!!ヒョン!!」 そう中からチャンミンが叫んだ。 ユノはすぐさまシャワー室を覗き、 「どうした?チャミナ!」心配そうに尋ねる。 チャンミンは服を着たままのユノに構わず抱き付き 「ヒョン!腹が立つ!あいつ許せない!」ユノの首にギュッとしがみつき そう訴えた。    ユノはドキっとした…  やっぱり間に合わなかったのか… そう思い、チャンミンをきつく抱きしめ返す。 「ヒョンが一番好きっていってくれたとこに、跡つけてるんだ… ヒョンにだって付けさしたことなかったのに… いくらこすっても消えないんだ!」 チャンミンにそう言われ、首から肩のラインを見ると いくつかの赤い印が残されている。 カッと血が上ったユノはチャンミンの綺麗な首すじの赤い印に 強く吸い付いた。 痛いくらいに吸い付かれたチャンミンは 「消して!ヒョン!あいつを消してくれよ!ヒョンで消して!」 そう叫ぶと、嫌な血の味が残る唇をユノの唇に押し付けた。 シャワーでビショビショになりながら、激しく抱きあう二人 シャワーとユノで気持ちの悪いケビンの息使い、唇の感触を流し去ろうと チャンミンは必死でユノを求めた。 ユノはチャンミンの上に残るケビンを消してしまおうと 荒々しくチャンミンを攻めた。 ベッドに横たわる二人… 「ヒョン… 飛んできてくれてありがとう … あいつ、倒してくれてありがとう…もうちょっと遅かったらと思うと ゾッとするよ…」そうユノを見て言うチャンミンに 「え?チャミナ…   俺、間に合った? あの…大丈夫だったのか?」 言いにくそうに聞いた。 「あ、ヒョンごめん。 言ってなかったね… 大丈夫 キスされたけど、唇噛んでやったし、いろんなとこベタベタ触られたけど ヒョンの声が聞こえて…それで終わり… ほんとにありがとう」 「チャミナ〜そうだったのかー良かった。さっきあんなに嫌がってたから でっきり… そうか…大丈夫だったのか… 良かった。 ここももう全部俺だから、これは全部俺のものだから… これまでも、これからもずっと」 ユノはそう言って、チャンミンの首から肩を指でなぞった。 「その代わり明日は襟の高い服着ろよ」チャンミンの首にも大量についた 自分が付けた印を撫でた。 そして、二人でおでこを合わせて、笑った。 「付け過ぎだよ、ヒョン」笑顔で言うちゃんみんに ユノは少し心配顔で 「チャミナ…ショックだったろうけど、早く忘れちまえよ」そう言った。 「ヒョン大丈夫だよ。何もなかったんだし、腹が立つけど… もう全部ヒョンが綺麗にしてくれたから」 あまりの可愛い台詞にユノの気持ちがまた昂った。 そんなユノの気持ちに気づかず、チャンミンは 「ヒョン… 仕事に影響しないかな…事務所に怒られないかな… 倒しちゃって…」 「大丈夫!チャンミナは心配しなくて大丈夫!専務にも言ったし… 何とかしてくれるだろ」  専務何とかしてくれるかな… と内心では少し不安になったが ユノはチャンミンに心配かけまいと強い口調でそう言い切った。  その時チャイムが鳴った。 ピンポンピンポンピンポン  かなり慌てた様子だ。 モニターを見るとマネージャーが立っていた。 「しまった!!!!マネさんに連絡するの忘れてた!」ユノは慌てて 服を着て、「チャンミナ出てくるなよ!」とチャンミンにそう言い玄関に向かった。 鍵を開けると、血相を変えて、マネージャーが入ってきた。 「ユノさん!帰ってたんですね!?チャンミンさんも一緒ですよね!? どっちに電話しても全然出ないから、みんな心配してたんですよ! ちょっと専務に電話します」 「あーすまない」ユノは恐縮した様子で言った。 マネージャーは専務に電話をかけて、二人が部屋にいた事を報告すると 「はい、わかりました」と言って 「ユノさん専務です」と電話を渡す。 「もしもし、専務、すみませんでした。連絡しなくて」 「ユノ…チャンミンは大丈夫か?」 ユノはそう聞かれて、何と答えたらいいのか悩んだ末 「少しショックを受けて、寝ています」 「ユノ…  はっきり聞くけど…  チャンミンあいつにやられたのか? おまえ、間に合ったのか?どっちだ?」 ユノはチャンミンの首すじにのこっていた赤い印が思い浮かび、 一瞬血が上ったが 「いえ、大丈夫です。チャミナは汚されてなんかいません!!」 そう怒鳴った。 「そうか…良かった…すまないユノ…あいつの悪い噂は聞いてたから、 おまえがアメリカに行くときは、万全の体制で行かせたんだ。 屈強なボディーガードが四六時中ずっとついてただろ?」 「…あ  そういえば…」 「まさか、こっちに来てチャンミンにまで手を出すとは… 油断したよ…俺のミスだ。すまない、ユノ。 おまえのおかげでチャンミンが無事で良かったよ」専務が心底ホッとした様に そう言ってくれたので、ユノは安心した。 「あいつは腕利きだけど、評判はすこぶる悪かったんだ。これからは あいつとは係らないようにするから、仕事の事は心配するな。 おまえが気にしてたって、マネージャーが言ってたけど、 そんな事はおまえは気にしなくていいんだから」 「専務…  ありがとうございます!!!」 つづく