ユノとテミンは車の中だった。  …俺はいったい何をしてるんだろ?こんな事してどうなるんだ? チャミナがダメなら、テミナ…  そんなもんだったのか? 俺の気持ちはそんな簡単なもんだったのか?  … 違う ただ苦しかったんだ…  チャミナが離れていきそうで 怖くて、不安で…  チャミナ… おまえに逢いたい… おまえに逢って、抱きしめたい… 「テミナ…すまない… やっぱり帰ろう」 「ユノヒョン!どうして?」 泣きそうになるテミン。 その時ユノの携帯が鳴った。 「はい、もしもし…  え? 今なんて?」 ユノの手が大きく震えだす。 「ユノヒョンどうしたんです?大丈夫ですか?」 「すぐに行きます」ユノはそう言い、電話を切った。 「運転手さん!明洞病院へ!急いでください!!」 「ユノヒョン!どうしたんですか?病院って?誰がどうしたんです? ヒョン!ヒョン!!」 テミンはユノの肩を揺すり、必死で聞くが ユノはあまりのショックで答える事が出来ない… 「…   チャミナ …」そう小さく呟くのが精いっぱいだった。 「チャンミンヒョンがどうしたんですか?」 ダメだ… テミンはユノではらちが明かないと思い ミノに電話をする。 「もしもし、チャンミンヒョンに何かあったんですか?」 「あ、お前丁度良かった。ユノヒョンも一緒だろ?俺も今病院に向かってるんだけど、 チャンミンヒョン車で事故って、今意識ないらしいんだ… すぐに病院へユノヒョンと行ってくれよ。  さっきチャンミンヒョンから電話あって 話したばっかりだったから、びっくりしたよ。 おまえとユノヒョンの事聞いてたから…」 「え?ミノヒョン、チャンミンヒョンに言ったんですか?僕とユノヒョンの事?」 「ああ、テミンどこ行ったか知ってるか?ってヒョンが聞くから、 ユノヒョンと一緒に出掛けましたよ、って答えたんだけど… いけなかった?」 「ミノヒョンはかなり鈍感ですからね… 仕方ありませんよね…」 「何?なんで俺が鈍感なんだよ!どういう意味だよ!!」 「今そんな事でもめてる場合じゃないので、またゆっくりと。じゃぁヒョン切ります」  テミンはユノの震える背中をさすりながら、「ユノヒョン、大丈夫です。 きっとユノヒョンが行けば、チャンミンヒョンは気づきますよ…。 ごめんなさい、ミノヒョンが僕と一緒にユノヒョン出かけたって言ったみたいで…」 ユノはそれを聞いて、ハッと顔を上げた。 …だから、こんなに遅い時間に車で出かけたりしたのか?… チャンミナ… 無事でいてくれ! 頼む!  病院に着き、電話で聞いた病室を探す。 チャンミナ! 恥ずかしそうに俯き加減で笑うチャンミンの笑顔がユノの頭を一杯にする。 あった!ここだ!病室を見つけ、一瞬開けるのをためらったユノだったが 覚悟を決め、勢いよくドアを開ける。 大勢の人の中で頭に包帯をまき、眠るチャンミンを見つけ、 「チャミナ!」と叫ぶ。 その声を聞き、皆が場所をあける。 ベッドの横で膝まづき、チャンミンの手を握り泣いている チャンミンの母親が 「ユノ君…早く…ここに来て  あなたを呼んでいるわ あなたの名前ばかりを…」 ユノは駆け寄り、チャンミンの手を握る。 その手には指輪が光っていた。 「チャミナ!チャミナ!」大きな声で眠っているチャンミンを呼ぶが 何の反応もない… 「お母さん、チャンミンはどうなったんですか?」 「先生は命には別条はない、っておっしゃるんだけど、頭を強く打ったみたいで 意識が戻らないのよ…」 …  なんでこんな事に … ユノはチャンミンの手を両手で握り、自分のおでこにあて、祈った。 「チャミナ!チャミナ!」何度呼びかけても、目覚めない。 たまに「ユノヒョン…」と悲しそうに口にするチャンミンを見て ユノは涙が溢れた。 …どうして、そばにいなかったんだろう… …どうして、チャミナを置いていってしまったんだろう… 別れる事なんかできないのに… 離れる事なんて、出来るわけなかったのに… こんなに俺を呼んで… 俺との指輪をして… … どうして、チャミナの気持ちを疑ったりしたんだろう… チャミナ… すまない… 流れる涙を拭おうともせずに、チャンミンの手を握りしめ祈り続けた。 命に別状はなく、脳震盪と言う事でもあり、1人帰り、2人帰りで 病室には母親とユノだけになった。 「ねぇ〜ユノ君、チャンミンはこんなに遅い時間にどこに行こうとしてたのかしら?」 「…  お母さん、すみません… 今日は一緒じゃなくて…」 ユノはテミンと一緒に遊び、向かおうとしていた所の事を考えると、 顔を上げる事が出来なかった。 「いいのよ、あなたを責めているわけじゃないのよ …ちょっと飲み物でも買いに行ってくるわね…」 「はい、お母さん、僕が見ていますから…」 チャンミンとユノの二人きりになった病室で ユノはチャンミンの頬に触れた。 … あたたかい … チャンミナ… 早く起きてくれよ… チャンミナ!!! 大きく叫んだ。 「 …   ん  …   ヒョン?」 うっすらと開く瞳 チャンミナ! チャンミナ! …  ヒョン …  ようやく目が覚めたチャンミンはキョロキョロと辺りを見渡し、 「いたた…」と頭を押さえた。 「大丈夫か!?チャミナ!良かった!目が覚めて良かった」そう言うと、横になったままの チャンミンに覆いかぶさるように、抱きしめた。 「ヒョン…  ここは?頭痛いよ…」 「病院だよ、チャンミナ…ちょっとお母さん呼んでくるよ」 そう言って部屋から出て行こうとするユノに 「ヒョン!!!」と呼び、手を伸ばし苦しそうに起き上がろうとした。 ユノは慌てて、チャンミンのそばに戻り、チャンミンの差し出す手を握った。 「ダメだよ!まだ寝てなきゃ …どうした? チャミナのお母さんすごく心配してたから、目が覚めた事知らせなきゃと思って…」 チャンミンはそう言うユノをじっと見つめていた。 握られた手をギュッと握り返し… 何も言えずにただじっと見つめた… 「チャンミナ… ここにいるよ … そばにいるから… 」 しばらくユノの顔を見つめていたチャンミンの瞳に涙が溢れ、 一筋の涙が零れた。 「あ…」自分でも驚いたように、チャンミンは瞳を拭いた。 「ユノヒョンの指にはもう僕との指輪はないんだな」 チャンミンはそう言うと、ユノの手を離した。 「それは!!ケビンの事があったから、するのやめようって言ってたじゃないか」 「たとえ指にはめていなくても、前はちゃんと見えたのに… もうユノヒョンのここに僕はいないんだよ…」 「違う!違う!チャミナ!!俺だってずっと…」 「聞きたくない!!! 嘘ついたじゃないか!!!ドンへヒョンと一緒だなんて… ほんとはテミンと一緒だったんだろ!!!! 帰らないかもしれないって … 帰らないかもって…」 また零れ落ちそうになる涙を堪え、それ以上言えなくなった。 ユノは立ち上がり、チャンミンの手を再び掴もうとした時、ドアが開き 「チャンミン!!目が覚めたのね!!」母親がチャンミンに駆け寄り抱きしめた。  ユノとチャンミンはその後二人でじっくりと話す事も出来ないまま、 チャンミンの退院の日を迎えた。 「ユノ君、しばらくチャンミン連れて帰ってもいいかしら?」 「え?」 ユノはようやく二人でじっくり話をして、 早く元の関係に戻りたいと願っていたので、 チャンミンが嫌だと、言ってくれないかと、チャンミンの方を見た。 しかし、チャンミンは俯いたまま母親に寄り添っていた。 事故の後という事もあり、ユノが母親の申し出を断る事など、出来るわけがなかった。 母親と一緒に車に乗ろうとするチャンミンをつかまえ、 「チャンミナ、帰ってくるだろ?帰ってきてくれるよな? 俺を一人にしないよな? な!?チャンミナ!!!」 ユノはチャンミンの腕をつかみ、必死で訴えた。 チャンミンは静かにユノの手をもう片方の手で離し、 「先に僕を置いて行ったのは、ユノヒョンじゃないか…」 悲しい目だが、強い口調でそう言った。 「だから、それは…!」車に乗り込むチャンミンを追いかけ、 「チャミナ!話を聞いてくれよ!」そう叫ぶが チャンミンはドアを閉め、母親と共にユノの視界から消えて行ってしまった。 つづく