「おはよう チャンミナ…」 「…  ん?? … ユノヒョン  … おはよう…」  ユノの腕の中でけだるそうに目覚め、昨夜の乱れた自分の姿を思いだし、 頬を染め、ユノを見上げるチャンミン。  腕の中にチャンミンがいる…それだけで満たされた気持ちになり、 体が上気するユノ。  空白だった時間を埋める様に二人は幸せを噛みしめながら、 抱きしめ合った。 「これでやっとSMTに向けて集中できるな… みんながどんな風ににうけいれて くれるか…不安だけど、やれる事はやったよな? な?チャミナ…大丈夫だよな?」 「そうだね、ヒョン。一生懸命頑張ったよ。ヒョンも僕も全力で頑張ってきたよ。 みんなの反応は気になるけど、やれる事はすべてやったよ。悔いはないよ」 「チャンミナ…  たとえみんなが受け入れてくれなくても、 たとえみんなに認めて貰えなくても… ずっと二人で頑張って行こうな…チャミナ…一緒に頑張ってくれるだろ?」 ユノは抱きしめていたチャンミンを少し離し、顔を見て言った。 「そうだね、結果はどうでも二人で頑張ろう。 それより……… ユノヒョン… もう二度と僕の幸せ自分勝手に決めたりするなよな」 ユノの顔を見てそう言い、少し考えてもう一度ユノを抱きしめる。 恥ずかしそうに「ここが僕の幸せなんだから」 小さな声でそう言った。 「チャンミナ!!」ギュッと抱きしめるユノ。 「離さない!二度と離さない!!!」  SMTの通し稽古が始まった頃、二人は社長に呼び出された。 「先生、ご無沙汰していました」二人は丁寧にお辞儀をして、挨拶をした。 「やぁ!ユノ、チャンミン、どうだい?頑張ってるかい? 君たちの事はスタッフから聞いてるよ…一生懸命寝る間も惜しんで、練習しているってね」  「はい、今はそれしか出来ないので…」 「そうだな。  SMTで二人での反応が良ければいいんだが… こればっかりはふたを開けてみないとな… 君たちの頑張りはわかってるけど、評価するのはファンだからね。  それで…  もし…  もしだよ… ファンの反応が悪かったら、東方神起に新しいメンバーを入れようと思うんだ」 「え!?」思わず驚き、二人共立ち上がる。 「先生!!!これからも二人でやらせてください!お願いします!!!」 ユノが叫び社長の腕をとる。 チャンミンも同じように、社長に近付いた。 「決まったわけじゃないんだ…もし …もし あまりにファンの反応が悪かったらだよ。 大丈夫だよ。きっとファンも君ら二人を待ってるよ」 「……   はい…  … 先生  わかりました」 人気が一番なのは二人共痛いほどわかっている。 自分達の想いだけで、何でも通用するものでないと言う事も。  部屋を出た二人は、すぐさま手を握った。 「大丈夫!大丈夫だよ。きっとファンは俺らを待っててくれてるよ… 大丈夫…大丈夫だよ。チャンミナ大丈夫」 「…  頑張るしかないですね … 崖っぷちだね…ヒョン …」 「別れさせられるわけじゃないんだから…」 「それはそうだけど…」 「…  とにかく頑張ろう …」ユノはチャンミンの肩に手をまわし、引き寄せた。    何事もなかったように他のメンバーと混じり、リハを進める。 「頑張らなきゃ…結果をださなきゃ…」 プレッシャーが二人の肩に重くのしかかった。 どちらかというと、お祭り感覚で楽しく練習していた、他のメンバーは 二人のピリピリした雰囲気に圧倒され、一気に緊張感に包まれた。 「チャンミナ…俺今日はこの後写真撮影あるから」 「そうでしたね…じゃあ久しぶりにキュヒョンと飯食いに行こうかな」 「ああ、そうしなよ…多分撮影遅くなると思うし」 ユノを見つめ、小さくうなづくチャンミン。  ユノの写真撮影現場には小さな子供が何人かいた。 「あ〜可愛い」子供好きのユノは思わず駆け寄る。 「何歳?」子供の手をとり、尋ねる。 「にしゃい」 小さな可愛らしい手で指を二本たてて答える。 「かわいいなぁ〜にしゃいなの〜〜」とデレデレな顔で子供を抱き上げるユノ。 頬ずりしながら、「可愛いですねー、僕も早く子供が欲しいですよー」と 周りのスタッフに言い、笑いを誘う。 子供たちとの写真撮影が楽しく終わり、他の撮影も順調に終了し 帰りの車の中 …  可愛かったなぁ〜 男の子も可愛いけど、女の子もいいよなー ちょっとおませで。 男の子は二人くらい欲しいよな… 一人ニヤケながらそんな事を考えていたユノだったが… …  ふと そう…ふと チャンミンの顔を思い出した時、 急に胸がざわついた。 そんな事は考えた事もなかった。先の事など、見ていなかった。 今しかなかった。 離れたくない… 離したくない… その想いだけだった… …    俺たちに未来はないのか  … 目の前に突き付けられた、残酷なまでの現実… …  チャンミナ  …  キュヒョンと食事をするチャンミン 「もう怪我はすっかりいいのか?」 「ああ、もう大丈夫。そんな大した怪我じゃなかったしな」 「おまえ…どこに行こうとしてたんだよ…あんな遅い時間に」 「…  ドライブだよ …」 「あの日、ドンへヒョンが一緒か?とか聞いてたよな?何だったんだ?」 「… 解決したから、いいんだよ…」 「何だよ、それ…まぁ解決したんならいいけどさ」 少し拗ねた表情でしぶしぶ納得するキュヒョンだった。 「なぁ、それよりおまえ彼女できた??」 唐突にそう聞くチャンミンに キュヒョンは飲んでいたワインを吹き出した。 「急になんだ!?できてねーよ!!おまえはどうなんだよ!!」 「いや、いないけどさ…  なぁキュヒョン…人生ってわかんないもんだな…」 「おまえはおやじか!!!!!!」キュヒョンはそう言い、 二人は楽しく笑い、グラスを傾けた。  先に家に帰ったユノは気づいてしまった重い現実に、体を動かす事が出来なかった。 ソファに深く沈み込み、二人の新しい曲を聞いていた。 しばらくして、「ただいま」少し酔ったような明るい声で チャンミンが帰ってきた。 あ…「おかえり、チャンミナ、キュヒョンと楽しかった?」 ”こっちこいよ”というように、ソファの自分の横をポンポンとたたくユノ。 嬉しそうにはにかみ、ユノの隣に座るチャンミン。 「楽しかったよ!ヒョンは?写真撮影どうだった?何の撮影だっけ?」 「今日は子供も何人かいて、可愛かったー」 「へぇそうなんだ、ヒョンは子供好きだから、良かったね。小さい子?」 「あーすごく可愛くて、 にしゃい〜って言ってたよ」 ユノは子供がしたポーズをまねた。 「ハハ… ヒョン、可愛いからって抱っこしてギューギューしてたんだろ? 目に浮かぶよ」 「そうさ!もう可愛くてたまんないから、ホッペにチューしまくってやった」 ユノはそう言いながら、チャンミンのホッペに何度もチューをした。 「こっちのもかわいい〜」 ギュッとチャンミンを抱きしめた。 「あーユノヒョンの匂いだ…」 「何?汗くさい??悪い…まだシャワー浴びてなくて」 慌てて離れる。 「違うよ。ヒョン…落ち着くんだよ… あのさ、テレビで見たんだけど、人の匂いを嫌がるか、そうじゃないかって 人間の本能なんだってよ。もし誰かがヒョンの匂いを嫌だ。臭いって感じたとしても 僕にとってはそれは嫌な匂いじゃなくて…落ち着く匂いなんだよ。 これ本能なんだって。 だから、僕らやっぱり出逢うべくして出逢ったんだよ。 チャンミンは無邪気に自慢気にそう言い、またユノに抱き付いた。 ユノはそれを悲しく受け止めた。 … チャンミナ …   頭の良いおまえが… それは異性の話だってわかってるんだろ? この辛い、未来のない俺たちが…運命だって… 出逢うべくして、出逢ったって…  そう言ってくれるのか? …  チャンミナ … ユノはチャンミンを黙って抱きしめた。 つづく