【樂さん×アダ】



俺は今何を、しているんだ。
口づけた肌のあまりの柔らかさに、怯む。

「…っん…!」
ぎゅっと目を瞑り堪える顔は、見慣れたサイズより一回り小さい。
そこから伸びる首も肩も腕も足も胴も、小さく細く、華奢だった。当たり前だ、ガキの身体なのだから。そのガキの身体が今、自分の手の中で小刻みに震えている。
なにやってんだ。どうしてこうなったんだっけ。戻れよ。今ならまだ。今ならまだ。
頭に警鐘が鳴り響く程、唇は浮かされたように肌へ吸いつく。
「ゃうっ、あ…!」
その度上がるアダの声が、樂の中の何かを壊した。
ガキの声だ。身体相応のガキの声。なのに僅かに混じる"女"の音が、背筋をぞくりと粟立てて。
知らず、荒い息が樂から零れる。
ふらふらと、熱に浮かされた唇がアダの胸元へ吸いついた。
「ふや…っ!?」
無いと思っていた胸の、僅かな膨らみと柔らかさに気づく。気づいてしまう。
細い身体を抱き寄せて、幾度も幾度も口づけた。舌を使う気はどうしてか起こらない。ただただ口づけられる物足りない愛撫だろうに、幼い身体は僅かな快楽でも過敏に震えた。
白い肌が段々と桃に染まっていく。胸の先端も震える度に硬さを増し。反らされた白い喉を食むと、滲んだ大きな目から涙が伝った。
「ひにゃあ…っ!ぁう、あっ、あ…ふぁあ…っ」
次第に。細い足がもぞもぞと、身じろぎ始めた。
樂が気付いたと同時に、小さな手がぎゅっと首に回される。不安げに濡れた瞳が、樂を見上げた。
「らく…らくぅ…。」
幼くて、甘い、甘い声。
…脳髄の奥で、ぶつり、糸が切れる音がした。


fin.


【モブ×ラグナ】



地に叩きつけられ、後ろ手に手枷。複数人に抑えこまれては、さすがのラグナも振り払えない。
下衣を奪われ、無理矢理に後ろから貫かれる痛みに叫びを上げた。
「ッあ゛ぁあああ!!!ッくそ、糞が、糞がッ…ぁあ…!!」
「っは、まだナマ言えるたぁ余裕だなぁ、こんなザマ晒してよぉ…。」
最初こそ入らなかったが無理矢理こじ開ければどうということはなく。流れる血も手伝って、奥まで男を咥えこむようになっていた。粘膜を擦られる痛みより、自分の中へ踏みこまれるおぞましさの方が勝り始める。
一際。深く叩きこまれて、背が反り跳ねる。大振りなピアスが大きく孤を描いた。
「ぅあ…ッ!!」
「は、こうなっちまえば売女と一緒か。街一個吹っ飛ばしたテロリストがザマぁねぇなぁ…?」
「ッの…ふ、っく……ッてめ、ぇら、殺す…ッうあ…殺す…ッ!!」
「……おーおー、怖い怖い。」
涙が滲んで尚、射殺しそうな凶悪さでラグナは背後を睨む。
睨まれた男は一瞬すくんだが、あえて余裕げに笑み仲間に目配せした。
「…塞いどけ。」
その一言で、ラグナの口に別の男が捻じ込まれた。
「んッ!?んぐっ、んぅーー!!」
鼻をつくようなその匂いに怯んだラグナに、構わず男は自身を突き入れ始めた。頭を抑えて喉奥まで遠慮なく突っ込み、噎せようとお構いなしだ。
その間も背後の男は絶え間なく動く。内壁を強く擦られて上がる叫び。それさえも呻きや唾液にしか成らず滴り落ちた。
「んぶッ…ん、ぐ!んぅっ、んぅうう!!」
死ぬ。窒息して死ぬ。無我夢中でラグナは男を噛んだ。
噛まれた男は無様に叫んで逃げたが、その頭を思いっきり殴りつけた。
「ッの野郎噛みやがった…!ふざけた真似しやがってガキが!!」
「げほッ、げほッごほッ!!っぜ、は…」
解放されたラグナが噎せた。急に入った酸素をうまく吸えず、滲んだ涙が頬を伝う。その時。

耳元で銃声がした。

「―――!?」
瞳孔が開いた。一瞬感じたのは冷たい痛み。
やがて、燃えるような痛みに変わりのたうちまわる。血に濡れたピアスが遠くへ落ちた。
「…この期に及んでまぁだ状況がわかってねーようだなぁ…?」
繋げたまま、下卑た笑みを浮かべる背後の男。その手には煙をくゆらせる銃。激痛で締まるその感触に口端を吊りあげた。
土埃にまみれた、青い髪を鷲掴む。びくっとラグナが目を細めた。痙攣する首筋と、締まる内壁に男は笑む。
「お前は俺達に刃向かえる身分じゃねぇんだよ…わからねぇならわからせてやるしかねぇよなぁ?」
もう片方のピアスに、熱い鉄が触れた。


fin.


【モブ×ウト】
【ラグナ達と出会う前】



「…ん…ぅむ、ん、ん…。」
無人の廃倉庫は、小さな水音もよく響く。くちゅ、くちゅ。舌で舐め口に出し入れする音が、よく響いた。
埃と錆でざらざらの地面に、白い両手をぺたりとつけている。言いつけられるまま素直に従順に。それでも万が一がないように、その手首には重い枷がついていた。枷からは鎖が伸び重い鉄球へ繋がる。
万が一が、ないように。
言われるまま男を咥えていたウトは、上目遣いに相手を伺った。
「…へったくそが。」
がっ、と髪を掴まれウトが身じろぐ。
「なんべんやってもヨくなんねぇな…使えねぇ奴。」
「いッ…ご、ごめんなさい…。」
「うっせぇ。もういいから足開け糞が。」
こくんとウトは頷くと、腰紐をたどたどしく掴んでひっぱった。するりと紐は解け、緩んだ下衣ははらりと落ちる。
足の枷だけはさっき解いてもらった。する時はいつもそう。生肌をさらけ出すや否や、叩きつけるように押し倒された。地に打った頭が痛む。
前戯もなく秘部へ捻じ込まれ。
大分慣れた。とはいえ。痛いものはやはり痛かった。
「ッう、ぐ…っ…ぅ…。」
「おい緩めろよ。動けねぇだろうが。」
「う、えっと…えっと…。」
「ッたくいちいち使えねぇなクズが!!」
「ッうあ!?」
焦れた男が強引に叩きつける。肉を裂かれるような痛みがウトを痙攣させた。反りかえる喉に見開く瞳。息がつまりそうな悲鳴が上がる。
「あ、うあッ!ひぐ、ぃうう、ぅあ…!」
「…ッ…うるっせぇな…もっとヨさそうに鳴けってんだ、よ!」
「ぃああッ!!ごめ、ごめんなさ…ッあ、あ…!」
それでも。度重ねれば身体は徐々に、快楽を見出すようになっていき。
素直なウトは誤魔化し方など知らない。感じるままに、声音を変えた。
「ひにゃ、あ…!あうっ、んぁっやっ、っふぁっあぁあ!!」
口元を抑えたりもしないので、桃に染まる頬がよく見えた。痛みと快楽で朦朧とした目が、薄赤く滲んでいる。
半開きの唇からは一筋の唾液と、熟れた吐息が零れる。
「っは、やりゃあできんじゃねぇか。いっちょまえに味しめてきたのか?あ?」
「っふ、よく、わかんな…あ…ッ!」
奥に、熱い液体が注がれる感触がした。開いた両の足は、大人しくそれを受け入れる。
終われば男はさっさと抜き、自分の分だけ後始末した。ウトの始末などするはずもない。達していないウト自身を、踏みつけるぐらいが関の山だ。
「ふ、あ…。」
ぐたり、とウトはねそべったまま動かない。虚ろな目は虚空を見つめていた。元通り服を着た男は、その呆けた顔のすぐ下、喉元をがっと踏みつけた。
「ッぐ!?」
「…おい。忘れんじゃねぇぞ。お前は文字通り俺達の"奴隷"だ。」
冷えきった目とウトの目が合う。男はウトの物覚えの悪さを知っていた。だから忘れぬように刻み込む。何度も、何度も。
「奴隷が逆らおうだの逃げようだのふざけた事考えんじゃねぇぞ。奴隷にんなもん許されねぇからな。お前は、俺達人間とはちげぇんだよ。」
灰色の目が丸く、見開かれたが。
すぐに表情を無くし、こくりと頷いた。

「…うん。僕とみんな、ちがう。」

だって僕は、バケモノなのだから。


fin.