博士とジョージ君

その3

 

・登場人物

 

博士

 

ジョージ

 

シャルロット(シャル)

 

ナレーション(ナレ)


●研究室

 

 

ナレ         「とある所に一人の科学者と二人の助手がいました。

科学者は実力を持ちながらも、

その性格のせいで誰からも見向きもされない変わり者。

助手のジョージ君もそんな変わり者と一緒にいる変わり者。

新しい助手のシャルロット君も、

そんな二人を尊敬している変わり者。

 

そんな三人は今日も変な研究を続け、

変な発明を行うのでした」

 

 

                                研究室でデータ整理や実験をしているジョージとシャル。

                                部屋に突然入ってくる博士。

 

 

博士         「ジョージ君! シャルロット君!

おはよう、今日もいい研究日和じゃな!」

 

シャル     「あ、おはようございます、博士」

 

ジョージ  「研究日和って、

外に出るわけじゃないんですから、

天気なんか関係無いでしょうに……」

 

博士         「はっはっは、気分じゃよ、気分。

それより、研究の方ははかどっているかね?」

 

シャル     「えっと、その、全然です……」

 

ジョージ  「はぁ、博士の発明品の解析なんて、

簡単には出来ませんよ……」

 

博士         「ん〜、そうか。

やはり常人にワシの考えを理解するのは、

困難じゃったか……」

 

ジョージ  「確かに、でたらめなオーバーテクノロジーを、

微妙な発明品の一部にする博士の考えは、

私達には理解できませんよ……」

 

博士         「うぐっ‥、微妙な発明品とは失敬な」

 

シャル     「そうですよ、先輩。

                博士の発明品は、

どれも面白い発明品ですよ!」

 

ジョージ  「まぁ、ある意味面白い発明品ばかりだな」

 

 

                                その時、シャルが何かを探し出す。

 

 

シャル     「あれ? あれれ?」

 

ジョージ  「どうしたんだ? シャルロット」

 

シャル     「ええ、その、ハサミが見当たらなくて……」

 

ジョージ  「ハサミ? そこに無いのか?」

 

シャル     「はい、どこに言ったんだろう?」

 

博士         「ああ、それならこれを使うといいぞ……」

 

 

                                そう言いながら、十得ナイフを取り出す。

 

 

博士         (だみ声で)せんとくないふ〜」

 

ジョージ  「なんでそんな声で言うんですか……」

 

博士         「いやいや、この声は便利な道具を出すときの定番だからな。

それよりもシャルロット君、使ってみたまえ」

 

シャル     「はい、でもどうやって使えば?」

 

博士         「そのボタンを押すんじゃ」

 

シャル     「ボタン? これですか?」

 

 

                                ボタンを押すシャル。

                                すると、それがグニャグニャと変形してハサミになる。

 

 

シャル     「すごい! 何かグニャグニャ〜ってなって、

ハサミになっちゃいましたよ!」

 

ジョージ  「またスゴイ技術の無駄遣いを……」

 

博士         「ふっふっふ、一見するとただの金属片だが、

特殊な形状記憶合金を使用しており、

千種に及ぶツールに変形するんだ」

 

シャル     「すごいです! 博士!

こんな小さな金属に、

そんな便利な機能が詰まってるなんて……」

 

博士         「そうだろう、そうだろう。

もっと褒めても良いんじゃよ?」

 

ジョージ  「……博士、質問してよろしいでしょうか?」

 

博士         「ん? どうした、ジョージ君?」

 

ジョージ  「それ、千種類に変形するのに、

ボタンが一つしか付いてないですよ?」

 

博士         「ああ、その事か‥」

 

シャル     「ハッ!

まさか、自動的にその場に必要な物に変形するとか?」

 

ジョージ  「……なるほど、

そのシステムなら、

複雑な操作も必要ないから誰でも簡単に使える。

博士にしては珍しくいい発明じゃないですか!」

 

博士         「え? 自動的に? そんなシステム付いてないよ」

 

ジョージ  「へ?

じゃあ、どうやって千種から選んで変形してるんです?」

 

博士         「ああ、それはランダムで変形するんじゃよ」

 

ジョージ  「ランダムって……、

じゃぁ、必要なツールが出る確立が、

千分の一しかないってことですか?」

 

博士         「ん? そんな事はないぞ? 刃物が必要なときは二分の一くらいじゃ。

なんせ、果物ナイフやカッターナイフ、

果てには日本刀や超振動カッターまで五百種類程あるからな」

 

ジョージ  「なんで、そんなに刃物の種類が充実してるんですか……」

 

博士         「いやぁ、なんていうか‥、浪漫ってやつ?」

 

ジョージ  「ロマンって……」

 

博士         「あ、ドリルもちゃんとあるから、安心しろよ」

 

ジョージ  「何を安心すればいいんですか!

はぁ、珍しくいい発明と思ったら、

必要ツールが出る確率が千分の一の上、

半分以上が刃物に偏っているとは……」

 

 

                                博士とジョージのやり取りの後ろで変形を繰り返しているシャル。

 

 

シャル     「おお! 先輩!

何かすごいのに変形しましたよ?」

 

ジョージ  「スゴイって、今度は何だ?

斬鉄剣とか……って、うわぁ!?」

 

 

                                ジョージが振り向くと、

そこには巨大な大砲が出来ていた。

 

 

シャル     「すごいですよ! 大きな大砲ですよ!」

 

ジョージ  「な、な、何なんですか! 博士!」

 

博士         「あ、それは護身用の対艦荷電粒子加速砲だね」

 

ジョージ  「ちょっとまてぇ!

護身用でなんで対艦砲なんですか!?」

 

博士         「ほら、ワシって天才だから、戦艦に狙われる事も……」

 

ジョージ  「いくらなんでもそれは無いですよ……」

 

シャル     「すでに質量保存の法則も超越してますねぇ……」

 

ジョージ  「……参考までに聞きますけど、

他に何に変形するんです?」

 

博士         「う〜ん、他は自転車やライターやゆで卵スライサー、

あ、あと地球破壊爆弾とか……」

 

ジョージ  「シャルロット、これ封印処理頼む」

 

シャル     「はい、先輩」

 

 

                                そう言って、

金属片をどこからか取り出した厳重な箱にしまうシャル。

 

 

博士         「ああ〜〜! ワシの自信作がぁ〜!」

 

ジョージ  「はぁ、また危険物が増えたよ……」

 

シャル     「えっと、これでA級危険物376個目でしたっけ?」

 

ジョージ  「ああ、どうやって処分すればいいんだよ……」

 

 

                                そう言って頭を抱えるジョージ。

                                博士は嘆き続けてる。

 

博士とジョージ君 その3