博士とジョージ君

その4

 

・登場人物

 

博士

 

ジョージ

 

ナレーション(ナレ)
●研究所

 

 

ナレ         「とある所に一人の科学者と二人の助手がいました。

科学者は実力を持ちながらも、

その性格のせいで誰からも見向きもされない変わり者。

助手のジョージ君もそんな変わり者と一緒にいる変わり者。

新しい助手のシャルロット君も、

そんな二人を尊敬している変わり者。

 

そんな三人は今日も変な研究を続け、

変な発明を行うのでした」

 

 

                                散らかった研究所で資料の整理をしているジョージ。

                                そこに博士が新しい発明品をもって入ってくる。

 

 

博士         「ジョージ君! とうとう完成したぞ!

飲んだ人間を思うとおりに操る薬、

その名も『くぐつくん3号』じゃ!」

 

ジョージ  「また怪しい薬を……。

そんなものを作って、

どうするつもりなんですか?」

 

博士         「無論、ワシを馬鹿にした学会を従わせるのじゃ!

待っておれ! すぐにワシの言いなりにして‥、

ぐわぁ!?」

 

 

                                部屋にあるゴミに足を引っ掛け、

盛大に転んでしまう博士。

手に持っていた薬は、床に落ちて割れてしまう。

 

 

博士         「ああ! ワシの発明品がぁ!」

 

ジョージ  「よかった‥じゃない、

博士、大丈夫ですか?」

 

博士         「ジョージ君!

何で部屋がこんなに散らかっておるんじゃ!」

 

ジョージ  「何でって、博士が昨日から、

『調子がいいぞ!』とか言って、

十分おきに発明品を持ってくるからじゃないですか」

 

博士         「え? そうだっけ?」

 

ジョージ  (小声で)ホント、過去を振り返らない人だな‥」

 

博士         「でも、発明品というより残骸の方が多くないか?」

 

ジョージ  「作ってきた物の一割が封印処理、

一割が機能不全でほぼ置物状態、

残りの八割が爆発です」

 

博士         「酷いのぅ……」

 

ジョージ  「いや、博士がやったんですけどね。

それより、あれだけ発明し続けたんですから、

少しは落ち着きました?」

 

博士         「ん? ん〜‥、まぁ、すっきりしたかの」

 

ジョージ  「そうですか、でしたらここを片付けますか」

 

博士         「え、片付けるの?」

 

ジョージ  「当たり前でしょう。

このままじゃ何もできませんよ?」

 

博士         「そうじゃ! シャルロット君は?

いつもなら彼女が掃除をしていたろう?」

 

ジョージ  「シャルロットは里帰りで留守ですよ。

それに居たとしても、

さすがにこの量を任せるわけにはいかないでしょう」

 

博士         「めんどくさいのぅ……。

はっ、そういえば!」

 

 

                                そう言って、博士は自分の部屋に入っていく。

 

 

ジョージ  「博士? どうしたんです?」

 

 

                                部屋から出てくる博士。

                                後ろにはメイド服を着たロボット。

 

 

ジョージ  「え? なんですそれ?」

 

博士         「ふふふ、名づけて『メイドさんロボ1号』じゃ!」

 

ジョージ  「……つまりお手伝いロボって事ですか?」

 

博士         「ふむ、さすがジョージ君、鋭いな」

 

ジョージ  「まぁ、メイドで連想される事は少ないですし‥。

そんな事より、まともに動くんですか?

他の物のように爆発するんじゃないでしょうね?」

 

博士         「はっはっは、安心したまえ。

これはちゃんと起動実験を終えている」

 

ジョージ  「それなら良いんですが……」

 

博士         「では、このロボの性能を見せてやろう!

『メイドさんロボ1号』よ、飲み物を持ってきてくれ」

 

メイド     「イヤです」

 

 

                                即答で断るメイド。

                                気まずい空気になる。

 

 

ジョージ  「……博士?」

 

博士         「ふっふっふ、見たか!

                これぞ、今の流行らしきものを取り入れた、

『ツンデレシステム』じゃ!」

 

ジョージ  「いやいや、よくわかりませんけど、

たぶん違うと思いますよ?」

 

博士         「え? そうなの?

仕入れた情報だと、

わざと冷たい反応を取るってあるんじゃがの?」

 

ジョージ  「博士、例えこれが良いとしても、

目的が達成されないんじゃ、

お手伝いロボとして意味無いでしょう」

 

博士         「それなら大丈夫じゃ、

ちゃんと命令は聞いてくれるぞ!」

 

ジョージ  「本当ですか?」

 

博士         「おお、ほら見るんじゃ!」

 

 

                                台所に歩き始めるメイド。

 

 

ジョージ  「飲み物を取りに行ったのか?」

 

博士         「どうじゃ!」

 

 

                                誇らしそうにしてる博士の前に戻ってくるメイド。

                                手にはジュースがあった。

 

 

ジョージ  「おお、飲み物を持ってきた!」

 

 

                                驚いている二人を尻目に、

                                メイドは手に持ったジュースを一気に飲み干す。

 

 

メイド     「げふぅ……。

別に、あんたの為に持ってきたんじゃないんだからね!」

 

博士         「どうじゃ!」

 

ジョージ  「『どうじゃ!』じゃないですよ!

なぜ自分で飲んでるんです!?

完全に自分の意思で行動してるじゃないですか!?」

 

博士         「いや、人間味があって良いんじゃないかなぁ〜っと……」

 

ジョージ  「確かに、人間らしい人工知能とか、

世紀の大発明ですけど、

こういうお手伝いロボットに使っちゃダメでしょう」

 

メイド     「部屋が汚い」

 

 

                                そう言って、メイドロボ手が変形して掃除機になる。

 

 

博士         「おお、『メイドさんロボ1号』の持つ、

百八つの機能の一つ!

『掃除機ハンド』!」

 

ジョージ  「また微妙な名前を‥。

でも、あんな小さな掃除機で、

この惨状をどうする気なんだ?」

 

博士         「ふっふっふ、侮る無かれ、

あの『掃除機ハンド』はワシが以前開発した、

『ブラックホール掃除機』を小型改良した物なのじゃ!」

 

ジョージ  「え!?

それって以前に封印処理した物じゃないですか!」

 

メイド     「掃除を開始します」

 

 

                                掃除機?が動き出すと、

研究所がブラックホールに吸い込まれてしまう。