「今日は七夕だな」 「そういや、そうだ罠。全く実感がないお」 「そっか、七夕か」 言われるまで気がつかなかった。 「短冊に願い事を書かないとー」 そう言いながらまゆりが短冊と油性ペンを取り出していた。 いつのまに用意したのかしら? 「何を書くかは秘密でおkだお」 「昔も私は書いたことがあったなー」 少しだけ、懐かしく思った。 「そうか」 「あのときに書いたことは忘れてしまって、思い出すこともできないけど」 子供だったわけだし、無理もないか。 「まあ、そういうものだろうな」 今は傍に大切な人がいる。 その人のためにも幸せを願っておこう。 私は、そう思った。 星にいくら手を伸ばしてもつかむことはできない。 思っているよりも本当はもっと遠くにあって触れることもできない。 いつまでも変わらない場所にあるように見えても、それは結局人間の思い込みよね。 いくらきれいで手に入れたくても星は手に入れることができない物。 それだけじゃなくて、星もいつかは無くなってしまう。 私には、なんだか悲しくて儚いように思える。 どこかの誰かがある本に書いていたっけ。 『人に夢と書いて儚い』って。 だからこそ、私は大好きな人のことを思って願う。 その願いを小さな短冊に託して。